産後ケアの3つの種類と特徴。今後の課題は?

「子どもはほしいけど、育てられるか自信がない」

「初めての出産で産後の育児が不安でたまらない。」

「母乳のことを聞きたいけど誰に聞けばいいのかわからない。」

「夜泣きがひどくて休めない。イライラする。」

「なんとなく育児がしんどい。」

子どもを望む方、妊娠中の方、育児中の方が子育てについて漠然と不安を感じたり、悩みがある人は少なくありません。むしろ何の悩みもなく育児ができるなんてことはきっとありません(笑)四人の母の私ですが、いつも誰かの何かに悩んでいます😂

そんな悩みや不安の多い産後の方に産後ケアという支援があります。国が「産後ケアを始めましょう!」とスタートしたのが2015年ごろ、それまでは公費の補助がある産後ケアはありませんでした。昨今、産後ケアが必要と言われる理由も含めてお話ししたいと思います。

今後産後ケアを利用するかもしれない人や絶賛育児奮闘中の方には是非読んでいただきたいです。産後ケアという一つの武器(選択肢)を備えることで、育児で困ったときに発動することができます。育児はいろんな武器(選択肢)や仲間(相談相手や支援者)を持っていることが大切です(^^)

みなさんが楽しく育児をしていくために一つの選択肢を知りましょう♪

産後ケアとは

以下厚生労働省のHPより、

「産後ケア事業は、助産師等の看護職が中心となり、母子に対して、母親の身体的回復と心理的な安定を促進するとともに、母親自身がセルフケア能力を育み母子とその家族が、健やかな育児ができるよう支援することを目的とする。具体的には、母親の身体的な回復のための支援、授乳の指導及び乳房のケア、母親の話を傾聴する等の心理的支援、新生児及び乳児の状況に応じた具体的な育児指導、家族等の身近な支援者との関係調整、地域で育児をしていく上で必要な社会的資源の紹介等を行う。

厚労省HPより「産後ケア事業の目的」

とされています。つまり産後ケアとは、「お母さんの心と体の安定をサポートし育児をする力を育てるサポート」とうことです。主なケア内容は、育児技術の支援、育児相談、おっぱいケア、赤ちゃんの一時預かり(お母さんの休息目的)、産後ケア以外の母子への支援の紹介などです。

産後ケアガイドラインより、利用者の条件は以下の通りです。

①産後に家族のサポートが十分受けられない状況にある者

②授乳が困難の状況のまま分娩施設を退院した者

③不慣れな育児に不安があり専門職のサポートが必要

ですが、一つ目の条件は2023年4月に削除されました。家族のサポート状況の有無にかかわらず、育児に不安があったり、育児相談をしたい人、休息をとりたい人は誰でも産後ケアを受けることができるということです。

なぜ、産後の母子をより手厚く支援する必要が出てきたのでしょう。

産後ケア誕生の背景

産後ケア事業は、昨今の母子をとりまく社会状況の変化により導入された政策ともいえます。今から数十年ほど前の昭和の時代は、三世帯、四世帯の家族が多く多子世帯でもあったため、子どもが産まれたらみんなで育児をする、手の空いている人が子どもの面倒をみるのが普通でした。

現在はどうでしょう。核家族化に加え、少子化、晩婚化、共働きの家庭が増えました。お隣さんに名前も知らない、そんな閉鎖的な社会になりつつあります。少子化が何十年と続き、小さな子のお世話をしたこともなく、関わったこともないお母さんお父さんが増えています。

誰にも相談できない、誰にも助けてもらえないと孤独な育児に耐え切れず、産後鬱などを発症するお母さんも増加傾向にあります。お母さんに育児を任せすぎており、二人目や三人目はとてもじゃないけど考えられないというご家庭も少なくありません。

そんな中、2014年に政府が「妊娠・出産包括支援モデル事業」としてスタートし、2015年から補助事業として本格実施されたのが「産後ケア事業」です。ですので、公費負担のある産後ケア事業がスタートしたのはまだ8年ほど前です。私が第一子を出産したころですが、産後ケアなんて言葉は知りませんでした。自治体の努力義務とされており、徐々に認知度が上がってきています。

産後ケアの種類

産後ケアには大きく三つの種類があります。

  • デイ(日帰り)型
  • ショートステイ(お泊り)型
  • アウトリーチ(訪問)型

デイとショートは入所型で、利用する母子が産後ケア施設に訪れサービスを利用します。一方、アウトリーチは訪問型ご自宅に助産師等の看護職が出向きケアを行います。ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

デイ(日帰り)型

デイ型とは、産後ケア事業を取り扱う施設を日帰りで利用することです。

産後ケアの対象施設は、助産院、個人クリニック、病院、産後ケア専門施設などです。すべての産院で産後ケアを提供しているわけではありませんので、各自治体のHP等で対象施設の確認が必要です。クリニックや病院はその施設で出産した方限定であったり、退院する予定の日から退院せず続けて産後ケア利用する場合のみ利用可能という施設があるためこちらの確認も必要です(ショートステイ型を利用し連泊する形)。また産後ケアの費用とは別に個室代金が必要になるケースもあります。

利用時間は午前中(10時前後※)から夕方(15~19時前後※)までです。デイ型の場合だと、授乳指導、育児相談、昼食、(沐浴)、休息の時間などがあり、帰宅するという流れです。(それぞれの母子で必要なケアやニーズが異なるため、限りある時間で優先的に必要なケアを行います。)

※自治体により利用時間は異なります。2~3時間/回の利用ができるというスタイルもあるようです。

私がおすすめする産後ケアの施設は助産院です。助産院では、家のようなゆったりしたスぺースで過ごすことができ、ベテランの助産師さんが育児相談に乗ってくださいます。さらに健康的なおいしい食事が提供されるところが多いんです。

育児についての相談は、一人あるいは数人の信頼できる人に相談するのがベターだと考えます。それが友達であってもいいし、実母であってもいいのです。育児は時代によってもその人の価値観によっても異なるもの。いろんな人の話を聞くと混乱してしまい、かえって疲れてしまうこともあります。

産後ケアを提供する助産師も人ですので合う合わないはあると思います。自分が信頼できる助産師(My助産師)を見つけることが出来るのは勤務交代のある病院やクリニックより助産院なのかもしれません。もちろん自身が出産した産院が親身に相談に乗ってくださり心地良いのならその施設を利用しない手はありません(^^)

ショートステイ(お泊り)型

ショートステイ型は、産後ケア対象施設に一泊二日でお泊りをするという形です。デイ型のお泊りバージョンですね。利用時間は午前中(10前後※)から翌日午前中ごろまで(10時前後※)であることが多いです。ショートステイ型を続けて利用できる場合もあり、例えばショートステイを三回繰り返して三泊四日で利用することも可能です。ケア内容はデイ型と概ね変わりませんが、夕食と翌日朝食の提供、お母さんの入浴もあります。夜中でも何か困ったことがあれば助産師に相談することが可能です。

※自治体により利用時間は異なります。

デイ型やショートステイ型の利用目的は、育児相談や授乳相談なども多いですが、休息目的の方も多くいらっしゃいます。食事が上げ膳据え膳であるだけでもかなり助かりますよね。子育て中は子ども優先になり、自分の食事はなんでもいいから手軽に済まそうというお母さんが多いです。食事を準備しても赤ちゃんが泣きだし授乳をしているとご飯は冷めきって、なんだか虚しくなるときさえあります。栄養面まで気を回して食事を作るというのは至難の業です。産後のお母さんは抱っこやオムツ交換などの育児動作だけで700kcal/日を消費しているとも言われています。そこに母乳をしているとなるとさらにエネルギーが必要です。冷凍食品やレトルト食品ではエネルギー量や栄養が十分ではないのです。「母乳育児だから栄養を!」ではなく「大切なお母さんの体だから栄養を!!」というのがわたしの想いです。私自身、産後の食事は手軽に済ませる日もたくさんありましたし、それがいけないことではありません。入所型の産後ケアのメリットとして栄養バランスのいい温かい食事を摂ることができるのです。

また少しの時間赤ちゃんを預かってもらい、ぐっと休まれる方もいらっしゃいます。ほんの数時間ですが安心して赤ちゃんを預け、休むことができれば心も体もすっきりします。いつもいつも頑張りすぎているお母さんたちがリフレッシュして帰っていただく、それがデイ型やショートステイ型を利用す目的の一つです。

また、授乳指導や育児技術の指導は出産施設により本当に様々。赤ちゃんの抱き上げ方もわからずに退院されるケースもあります。入院中の授乳に関しては教えてもらったものの退院後のミルクの量はわからないまま、ということもあります。粉ミルクの容器にも月齢に応じたミルクの量が記載されていますが、赤ちゃんの体格差や食いしん坊度合いなどで変わってきます。小学生も給食を残す子もいれば、たくさんおかわりをする子もいますよね。また、混合授乳の場合はミルクをどれくらい補足するのかとっても悩ましいところです。それぞれの母子に応じた授乳スタイルをその時期ごとにアドバイスすることができるのも産後ケアの大きなメリットの一つです。

アウトリーチ(訪問)型

アウトリーチとは「手をさしのべる」という意味です。自宅にいる母子に手をさしのべ援助するということで、訪問型ということになります。

それぞれのご自宅まで助産師等が訪問し、必要なケアや指導を行います。利用時間は自治体により異なりますが、1~3時間/回程度が多い傾向です。アウトリーチ型は利用時間も短めであるため、休息目的というよりは育児相談や授乳指導、室内環境へのアドバイスがメインになる傾向にあります。

入所型(デイ・ショートステイ)のメリット・デメリット

赤ちゃんのお世話に専念できる:自宅にいると、家事や上の子のお世話などに追われてしまい、赤ちゃんのことが後回しになることもあります。産後ケア利用中は赤ちゃんとゆっくり過ごすことができます。

休息できる:連日の睡眠不足でお母さんは疲労困憊である場合も。睡眠不足が続くと思考力が低下し、抑うつ気分になる傾向があります。少しの時間、赤ちゃんを預かってもらいぐっと休むことができるのは入所型のメリットです。

・(利用時間が長いと)授乳を何度も見てもらうことができ自信になる:今の授乳でうまくいっているのか自信がないお母さんも大勢います。授乳状況を見てもらい必要なアドバイスを受け、次の授乳で実践してみると少しずつ自信が持てるようになることもあります。今後の授乳をどのようにしていくかも相談でき自宅に帰ってからも困らないです。

おいしい食事を食べることができる

家族(旦那さんや祖父母)の負担軽減になる:新しく家族を迎えて喜びいっぱいですが、お父さんやおじいちゃんおばあちゃんが家事や育児を頑張りすぎて疲れてしまうことも少なくありません。産後ケアを利用することで家族にとってのリフレッシュタイムにもなります。

・産後ケア施設に行く準備が必要。(行く手段、持ち物の準備、上の子がいれば預ける調整など)

アウトリーチ型のメリット・デメリット

手軽に利用できる:産後は想像もできないほど外出するのが億劫になります。自分の準備だけでなく赤ちゃんの準備(おむつ交換や着替え、授乳や荷物の準備など)にすごく時間がかかります。アウトリーチの場合、特に準備は必要ありません。お部屋が散らかっていても育児や家事に追われていても気にすることはありません。

それぞれの住環境に応じた指導を受けることができる:普段授乳している環境をとっても十人十色です。ご自宅にあるものを使って授乳しやすいよう整えたり、赤ちゃんの過ごしている環境についてもアドバイスすることができます。月齢に応じて家の中の危険な場所は変わりますので、その都度アドバイスできるのもメリットの一つです。

デイやショート型を利用しづらい人でも利用することができる:産後ケア施設に行くにも、行くすべがない人や、経産婦さんなどは物理的にデイやショートの利用が難しい場合が多いです。最近では、ダブルケアと言って子育てと介護を平行して担っている家庭もあり社会問題にもなっています。そういった方々にもアウトリーチは利用しやすいと思います。

・自宅に助産師(知らない人)が入ることに抵抗がある方もいる。

・訪問が来る前に片付けないと、と焦ってしまう場合がある。(実際は散らかっていてもなんの問題もありません。お母さんと赤ちゃんのお手伝いをするのが産後ケアの目的です。)

産後ケアの課題

徐々に普及しつつある産後ケアですが、まだまだ課題もあります。

①自治体により利用金額や利用日数が異なる。

今回はあえて利用料金や日数を記載しませんでした。2019年に産後ケアが法制化されましたが、自治体ごとに取り組み状況に差が出ているのが現状です。利用日数や自己負担の金額も様々ですので、一度ご自身の自治体の産後ケアについて調べてみて下さい。

最近は自治体間での子育て支援策にばらつきがあり、「自治体ガチャ」と呼ばれたりするようです。住む地域によって子育て支援にばらつきがあるのはなんとも歯がゆい思いです。日本に産まれた子どもたちに平等な支援を提供してほしいものです。

②アウトリーチ型は取り組んでいる自治体が少ない

奈良県の場合ですが、デイやショート型はほとんどの市町村に普及しつつあります。しかしアウトリーチ型は奈良市をはじめ生駒市、大和郡山市、天理市、橿原市、桜井市、木津川市(京都府)などにはないというのが現状です。奈良県内のアウトリーチが型がある自治体は、宇陀市、平群町、斑鳩町、葛城市、上牧町、広陵町、王寺町などです。(2023.11月時点)

すべての母子が入所型を利用できればいいのですが、アウトリーチでしかケアが行き届かない人もいるのが現状です。

③希望の日に産後ケアを利用できない場合もある。

入所型の場合、産院のお部屋の空き状況や人員の確保等の理由によってこの日に利用したいという希望が叶わないときもあります。精神的にしんどい場合はできるだけ早く利用したいという方もいらっしゃいますが、日程調整が難しい場合もあります。アウトリーチ型でも助産師との日程調整が必要です。

④利用上限日数が決まっているため、いつ利用しようか悩む。

産後ケアの利用日数が5日だったとして、赤ちゃんが1歳になるまで利用できると説明を受けたとして、いつから、どれくらいのペースで利用しましょう。「今聞きたいことがある、いっぱいいっぱいでしんどい」と感じていても「今よりもしんどくなったときのために残しておこう」と我慢するお母さんたちもいらっしゃいます。利用上限日数が決まっているのは仕方のないことですが、本当にしんどい時に我慢しなければならないのは課題ですね。もし利用するか悩むときにはまず自治体に相談してみるか、思い切って産後ケアを一度利用してみてください(^^)

最後に

「切れ目のない子育て支援を」とのことで始まった産後ケア事業、とっても嬉しい反面まだまだ気軽に利用できないのが現状です。

「私なんかが使えるわけない」

「一人しか育てていないのにしんどいなんて言えない」

「もっとしんどいときのためにとっておこう」

「母乳の仕方がよくわからないしミルクをあげておこう」

「離乳食を作るのが苦痛でどうしていいのかわからない」

「相談したいけどどこに相談すればいいかわからない」

「サポートもたくさんあるのに困ってると言ったらどう思われるだろう」

頑張り屋さんのママたちはこんなことを思ってしまいます。日本のお母さんたちは本当に頑張りすぎるほど頑張ってます。産後ケアだけでなく、使える支援をすべて駆使して少しでも楽に子育てをすることが大切です。楽しんで育児ができるのが親も子もベストです(^^)妊娠中の方、子育て中の方、各自治体の子育て支援を調べてみてください。

私も産後ケアを利用したことがなく、今回の産後で初めて利用しようと思っています。私自身「助産師だし私なんかが利用するなんて…ほかにもっとしんどい人もいる」と思っていました。でも4人目の産後が初めてしんど調子を崩しました。何人目だから大丈夫、ということはないと実感しました。今回の産後も調子がいいとは限りません。申請だけしておいて使わなかったらそれはそれでよしだと思っています(^^)

上の子と数年空いている場合は新しい自治体の支援が追加されている場合もあります。子育ての集いの場が増えていることもありますのでまずは調べるか問い合わせてみましょう!使えるものは使っていきましょう✨

アウトリーチ(訪問)型の産後ケアはまだまだ広がっていませんが、赤ちゃんと過ごす自宅の環境を一緒に整えたり、それぞれ月齢に応じたアドバイスをしていけたらいいなと思っています。

産後ケア、もっと広まれ!!

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です